コラム7 生き残ったペットをどうするか

ひとり暮らしの高齢者の方たちの心配の種は、「ペットよりも先に自分が死んでしまったら」ということ。これがネックで、本当はペットを飼いたいけれど我慢しているという方も多いのではないいでしょうか。仮に60歳から子犬を育て始めると、15年以上生きる犬がいるため、自分の足腰が弱り、散歩に連れていけなくなる、ということも考えられます。

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自分の死後の、引き取り先を確保しておく

一番大切なのは、自分に万が一のことがあった時の「引き取り先の確保」です。有償・無償ふくめて検討しながら、信頼できる人にお願いしておくようにしましょう。遺言や死後事務委任契約で決めておくのもよいですね。主に負担付遺贈という形が考えられます。これは遺言により受遺者(財産をもらう人)が「財産を受け取る代わりに、一定の義務を負担する」こと。飼い主(遺贈者)はペットの世話をしてほしい人を選び、「財産を贈るからペットの世話をしてください」という内容の遺言書を作成します。もちろん遺言書だけでなく、事前に合意をとりつけておきます
また、生前にペットと次の飼い主との顔合わせを行いましょう。引き取り先について、あなたはよく知っており、信頼していても、ペットはその人が信頼できる新しい生活パートナー(飼い主)だと納得できるでしょうか。飼い主がいなくなったことを理解しはじめ、神経質になっているかもしれません。そもそも新しい飼い主になかなかなつけないということもあります。そんな状態で新しい生活を始めることは、新しい飼い主もペットも双方かなりのストレスを感じます。ときどき顔合わせをして、「この人は安心できる人だ」と覚えておいてもらうことで、少しでも早く新しい環境になじめるといいですね。動物は人間以上に変化に対して敏感です

ペットのためのエンディングノート(ひきつぎノート)

次に、ペットのためのエンディングノートを準備しましょう。引き取り先での生活は、ペットにとってストレスがかかりやすいものです。飼い主との別れを終え、慣れない環境の中でもストレスを軽減した生活を送ってもらいたいものです。ごはんの回数、散歩の有無、好きなこと・嫌いなこと、予防接種、病歴、かかりつけ医など、できるだけ多く新しい飼い主に伝えましょう。新しい飼い主の負担を減らすためにも必ず用意しましょう。

引き取り先を見つけられない場合

ペットが高齢化したり、不安定になりがちな性格の場合、自力で引き取り先を見つけられないということもあります。ペット里親募集の団体をあたってみるということもできます。ただ、野良猫などの殺処分をなくすための活動が第一義の団体も多く、終活の委託先としては難しいかもしれません。

ペット信託

生前整理の一環として近年注目を集めている「ペット信託」。これはペットに残したい財産を一般の財産と切り分けることを目的としています。

一般的な流れは、

  1. 管理会社にペットのために残す財産(飼育費、保険料、老犬ホーム代など)を移す
  2. 飼い主を代表とする管理会社を設立する
  3. 新しい飼い主(里親)を受益者とした遺言書を作成し、管理会社に移した財産がペットのために使われるように受益者と信託契約書を結ぶ
  4. 信託契約が守られているかの見守り管理を行なう「信託管理人(弁護士、行政書士)」を設定する
  5. 飼い主の死後(または介護施設に入居するなど、飼い主がペットを手放さなければならなくなった時)、受益者がペットの飼育費として財産を相続する
  6. 飼育費が適切に使われているかを信託管理人が見守り管理する

このように会社を設立するというと大変に思えますが、管理会社の設立・運営や里親探しなどをサポート・代行してくれる専門業者もあります。また、飼い主が管理会社を設立するのではなく、信託会社と契約して一切を任せるという方法もあります。

ペット信託のメリットは、財産を管理会社に移す(信託会社に託す)ことで、相続人同士のトラブルを避けられるという点。ペットのために確実に財産を残すことができます。さらに信託管理人を設定し、見守り管理をしてもらえるため、ペットの将来も安心です。ペット信託は2013年から始まった新しい仕組みですが、今後も需要が増えていくものと見込まれています。主に、行政書士や一般社団法人などがサービスを提供しています。