終活では自分の死後、遺族が困らないようにモノの整理を・・・と強調していますが、その前に立ちはだかる問題があります。帰省するたびに、物で溢れかえる実家の状況にびっくりしていませんか。ミニマリズムや断捨離に慣れた子世代が手伝おうとしても、戦後の高度成長期を通じて物に囲まれたほうが安心できる親世代とは分かり合えず、片づけはなかなか進まないといいます。「カツオが磯野家を片づける日」という書籍が話題になりました。実家の片付けは、心の問題ともいえます。どの物品をどう処理するという方法論だけでなく価値観の相違、コミュニケーションミス、プライド、生活習慣の尊重などソフト面での配慮が必要になります。
実家の片づけに失敗しないための5つのポイント
1)捨ててスッキリの完璧な片づけを目指さない
子世代のよしとする断捨離やミニマムは親の世代には響きません。親世代は物こそが豊かさの象徴であり、物に囲まれているのが安心で居心地いいということをまず理解しましょう。
2)親の習慣を優先した片づけを目指す
子どもが「ここにあるほうが便利」「これを使ったほうが効率がいい」と自分の感覚で片づけたり、便利な収納用品を揃えたりしても、親がの習慣を無視してしまうと効果がありません。すぐに元に戻ります。親の習慣を観察し、それを踏襲しつつ工夫した片づけをすることが成功へのポイントといえるそうです。
3)片づけのゴール設定を共有
物が雑然とした家は危険も伴います。つまり、実家の片づけで目指すべきは、親が安心・安全・健康に暮らせる家です。そのゴールを親子が共有しないと、ケンカや挫折を繰り返すことになります。「危ないから」「健康によくないから」などと、伝えながら片づけを進めましょう。「片付いていると孫が喜ぶよ!」というのも効果的だそうです。
4)片づけの主役は親 自分たちはサポート役に徹する
親が住む実家は親のもの。「片付けさせる、片づけてあげる」ではなく、「片付けさせて」というお願いモードで臨みましょう。
5)親は心身ともに老いて衰えていることを認めて、思いやりを示そう
家が片づかないのは、親が心身ともに老いている衰えの表れでもあるのです。そのことを理解して決して責めたりすることのないように、敬意を払いながら思いやりを忘れずに進めます。
実家片付けアドバイザー渡部亜矢氏によると、さらに円滑に片づけを進めるコツがあるそうです。
「捨てられない人にとっては、どれも大事な物なんです。それを決断するのを待っていても片づけは進みません。そこで、“まだ使えるから”“いただき物だから”と、捨てることを渋った物は、その気持ちを汲んで一時保管箱に入れて納戸や一時保管場所にうつし、処分はあとまわしにします。家のどこかにあるだけで安心感があり、片づけの時間短縮にもつながります」
さらに、どこの片づけからはじめるかも、重要なポイント。思い入れのある好きな場所から片づけはじめてしまうと、なかなか進みません。例えば庭先や廊下や階段、玄関、お風呂場など、核心から遠いところからはじめたほうが心理的抵抗が少ないとのこと。
そして、最後に実家の片づけをする際に、気をつけたい親へのNGフレーズがあるようです。つい言ってしまいがちですが、この一言でこじれてしまうご家庭もあるそうで、要注意ですね。いきなり「通帳はどこ?」など、財産の話を持ち出したり、「私を困らせないで」と責めたり、「どうせこんな物使わないでしょ?」「無駄な物ばかり集めてるね」など、親の人格否定は尊厳を無視するような発言はいけません。
何より親への思いやりを持ち、それを伝えること。そして、コミュニケーションをしっかり取りながら片づけを進めることが実家の片づけの成功につながるようです。
でも、どうしても体力的にも、心理的にも難しい場合は第三者の片付けやさんに頼るのもひとつの方法です。愛する肉親だからこそここまで悩むのです。ひとりで抱え込んで無理をしないようにしてください。
(実家片付けアドバイザー 渡部亜矢氏の講演や著書をもとにまとめました)
