お墓や葬儀のレッスンを読んで、お墓や葬儀はご自身でなんとかしよう、という気持ちになられたのではないでしょうか。一定以上の財産があれば、葬儀に続き「相続」という手続きが発生します。「相続」自体は、死後の手続きですので、終活されるご本人が行う手続きではありませんが、ご本人の指示がないと、いかに手間がかかるかという点をご理解いただくために、以下に流れをご紹介します。相続税の節税や指示は、生前にご本人が行えるものです。
最初に行うのは、「遺言書の有無確認」。遺言書は作ったほうがよいものですし、できれば公正証書がよいでしょう。そして遺言書があるならば、存在と保管場所を家族に知らせておきましょう。
遺言書が存在しない場合
遺言書が存在しない場合は、原則として相続人全員で遺産を分ける方法を決めます。これを一般的に遺産分割協議といいます。遺産分割協議は、相続人全員で行なう必要があります。相続人のうち一人でも協議に参加していない場合は、その遺産分割協議は無効です。全員参加ができない場合や一人でも合意しない者がいる場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
相続人の特定
相続人を特定するのは想像以上に大変なことです。第三者に証明するためにも、法的な手続きを踏みます。具体的な相続人の特定には、亡くなった人の全戸籍をさかのぼって順番に取得する必要があります。
遺言書が存在している場合
・遺言書がある場合は、本人のすべての戸籍は必要ない
正式な遺言書がある場合は、亡くなった人の戸籍(除籍)謄本と相続人あるいは受遺者(遺言で相続人に指名された人)であることの証明のみで足りることもあります。その理由は、遺言書があるので、相続人が限定され、わざわざ他に相続人がいないことを証明する必要がないからです。
しかし、遺言書の検認には基本的に出生までさかのぼった戸籍が必要になります。
【注意】想定外の相続人がいる場合
戸籍を確認すると、想定外の相続人が見つかるということもあります。想定外の相続人でも、その人を除いて相続手続きを進めることはできません。手紙を送ったり、面談を取り付けるなどして、状況を説明して協力してもらう必要があります。

相続財産(遺産)の調査
相続手続きをするにあたって、どのような相続財産があるかを調べることは非常に重要です。相続財産全体を把握しなければ、間違った相続手続きをしてしまう恐れがあります。相続財産のプラスマイナスによって、その手続きや課税方法が異なるのでしっかりと調査しましょう。
プラスの相続財産
現金や預金など
不動産
不動産上の権利(賃借権や抵当権など)
自動車やバイクなど
貴金属、骨董品、家具など
有価証券その他債権(売掛金や貸付金など)
知的財産権
生命保険(故人受取りのもの)
電話加入権
マイナスの相続財産
借金やローン
保証債務
損害賠償
未納税金
買掛金
本来はこれらの財産について、生前に財産目録を作っておくべきです。
相続財産でないもの
墓地や仏壇
香典や葬儀費用、埋葬料
生命保険(故人以外が受取り)
死亡退職金(みなし相続財産と判断され、一部相続税の対象)
相続方法の決定
相続方法には、単純承認・相続放棄・限定承認の3種類があります。
●単純相続
単純承認は、被相続人の権利・義務を無限に承継する方法。資産遺産も負債遺産もすべて相続することになります。民法では、この単純相続が相続の基本で、相続財産の内容が、プラスのほうが多いときに選ばれます。
●相続放棄
相続放棄の方法を選ぶと、その人は相続の始めから相続人でなかったものとみなされます。つまり、負債遺産はもちろんですが、資産遺産(プラスの資産)も承継を放棄することになります。この方法を選択するには「自己の為に相続が開始されたことを知った日」から3ヶ月以内に選択する必要があります。相続財産の内容が、マイナスのほうが多いときに選ばれる相続方法であり、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出しなければなりません。
・限定承認
限定承認とは、相続によって得たプラス財産の範囲でマイナス財産を弁済し、その後プラス財産が残っていれば、それを相続するという方法です。通常、相続財産の内容が、プラスが多いのか、マイナスが多いのかが、不明なときに限定承認の方法が選ばれます。この方法を選択するには「自己の為に相続が開始されたことを知った日」から3ヶ月以内に財産目録を作成し、「限定承認申述書」を家庭裁判所に提出することが必要です。
【注意】何もしないと、単純相続になる
被相続人(身内など)が亡くなると、自動的にプラス遺産もマイナス遺産も相続人が承継することになります。そのため、相続人は「自己の為に相続が開始されたことを知った日」から3ヶ月以内に上記3つの相続方法から1つを選ばなければ、自動的に単純相続になり、マイナス遺産が多い場合は、その負債の支払い義務も負うことになります。
葬儀の次に遺族が集まるのは49日です。死後3か月以内に相続方法を選ばなければならないため、49日の場で皆で意見の統一をはからなければなりません。そのための財産調査を1か月程度で終わらせるのは大変です。是非、生前に本人がとりまとめて周知しておきましょう。