この講座もそろそろ終わりに近づいてきました。終活とは、生きている時から死後まで、“いつ何をすべきか”や“最後はどうあるべきか”などを考えるものです。すでに、たくさんの計画やご家族への伝言が浮かんできていることでしょう。それらを具体的に記すのがエンディングノートです。
遺言書、遺書、エンディングノートの違い
この3点は、家族や周囲への意思伝達という意味では、目的は同じです。ただ、法的効力や使われる場面、記す形式が異なりますので注意しましょう。
遺言書とは
自分に万一のことがあった場合に財産(遺産)を誰にどれだけ渡すか、事業や不動産などの管理を誰に託すかを生前に取り決めた意思表示を、民法の規定に従って書面に残したものです。遺言書の内容は、原則として法律で定められた相続の規定よりも優先されるなどの法的効力があります。そのため、相続をスムーズかつトラブルを防止するために作成されることが多いものです。公正証書遺言書や自筆遺言書など形式により、効力発生のための手続きが異なることをおさらいしておきましょう。
遺書とは
自分が死ぬことを前提に、自分の気持ちを家族や関係者に向けて記したものです。プライベートな手紙というイメージがありますが、実は他人の目に触れる機会の多いものなのです。たとえ本人が「妻だけに」と遺したとしても、不審死だと思われて検視対象になると、警察や第三者の目に触れることは避けられません。内容は、病死における家族などへの感謝の言葉や、自殺における身の潔白や保身、加害者への憎悪や怒りなど、心情について書かれることが多いようです。形見分け程度は対象にできますが、遺言書のような財産価値が発生する遺産については書きません。また、書いたとしても法的効力は発生せず、その部分は無効です。
エンディングノートとは
遺言書がおもに「死後の財産分与」、遺書が「最後のメッセージ」ならば、エンディングノートは「その人の生きた記録と希望」といえるでしょう。遺言書のように法的効力はなく、遺書のように死に特化した内容でもありません。また、死期が迫っていなくても、漠然と「いつか訪れるはずの死」について書いてよいのです。
エンディングノートは「死後のためのノート」ではなく、「よりよく死を迎えるための生前ノート」です。「死んだあとにどうするか」という情報だけではなく、「自分らしい最後を迎えるために何をどうするべきか」を語ります。必ず訪れるゴールに向かって、自分の立ち位置を確認し、備える。そして必要ならば、これから修正する、というライフプランのようなものです。過去や現状を書き出してみることで、未来への願望を発見するプロセスです。自己分析のツールとして、また家族への伝言として好きなように使ってよいのです。
