Lesson2-1 自立した生活とは

先ほどのレッスンで紹介したように、終活にあたって考えるべきことの1つとして、自立した生活がいつまでできるかという点があります。このレッスンでは、自立した生活とは何かを見ていきましょう。

年をとると身の回りのことが一人でしづらくなり、自立するのが難しくなっていきます。ここでは介護が必要か否かではなく、どの段階までなら一人で大丈夫か、工夫できることはないかについてまず考えてみましょう。

自分らしく生きるための4つの自立とは以下です。これらをなるべく保持する、そして老化で自立が難しくなっても何らかの対処をするのが終活だと言えます。

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①身体的自立

聴力や視力を含め、一人で外出したり生活できるのが理想です。普段から足腰を鍛え、脳トレなどを行うことで老化のスピードを遅らせることもできます。もし、きこえにくくなっても補聴器がありますし、歩きづらくても杖があります。白内障の手術、股関節の手術などで改善できることもあります。現代では、身体的自立保持の気運はかなり高まっているといえます。

②経済的自立

年金や貯蓄、あるいは仕事による収入で生活できるかということです。子供がいると、子供からの支援が得られますので、ここでは一人暮らしの方に焦点を定めて調べてみましょう。

残念ながら、一人暮らしの高齢者が経済的に自立している割合は高いとは言えません。2011年度生活保護受給者全体のうち、65歳以上が占める割合は4割近くにのぼります。単身高齢男性は12.5%、単身高齢女性は15.7%です。2010年の国勢調査をもとにした計算では、一人暮らしの男性高齢者の6人に1人が生活保護を受けており、その比率は年々上昇し、高齢者の貧困は深刻な社会問題となっています。

総務省の2014年家計調査によると、無職で60歳以上の一人暮らしでは、毎月の支出は15万3723円、年金などの収入は11万程度で、不足分の4万円を貯蓄から切り崩している計算です。夫婦二人暮らしの高齢世帯でも、月額平均6万円以上が赤字ですので、ひとりでもふたりでも年金だけでは生活できず貯蓄を切り崩す覚悟が必要だといえます。加えて、施設への入居、葬儀などにはまとまったお金が必要となります。

定年退職後には、貯蓄することは難しいので、住宅ローンは払い終えておく、必要貯蓄額を貯めきる(65歳退職後、夫婦二人で3000万円、おひとりでも2000万円近くが必要)など事前準備が肝心です。

どうしても経済的に難しい場合は、市区町村役場に相談すれば、自宅を担保に生活資金を貸してもらえる制度もあります。それができない場合は、生活保護を申請することができます。

③生活的自立

いわゆる家事能力です。特に男性が高齢になってから家事を一から始めるのは億劫でしょう。洗濯が面倒、着替えをしない、お風呂に入らない、外出しない、と無気力の連鎖につながりかねません。外出して人と話すことは健康に重要な位置を占めます。そのためにも、家事を習慣化し、あえて動くことで、生きる張り合いを持ち続けましょう。

④精神的自立

人生に夢や目的があるか、人のために何かをしたいと思えるか、自分の存在に価値を見出せるか、自分で判断できるか、など、まさに「生きる」意味を持ち続けることです。たとえ余命が限られていても精神的自立はできますし、最近は自己決定権を尊重する時代になりました。寝たきりになって他人の世話を受けていても、精神的自立は最後まで残り続けますし、その方の人生の質を高めてくれます。