終活の大きな目的のひとつが、身辺整理です。遺族が遺品整理で苦労しないよう、自分で取捨選択し、片づけてこうという気運が高まっています。そこで忘れてはいけないのが、物の整理だけではなく、お金にまつわる情報の整理。自分だけでなく、家族にも分かる形にしておきましょう。このレッスンでは、お金の終活のコツを学びましょう。
「生前整理」は、自分の持ち物の取捨選択に加え、遺品整理や相続問題で家族が困らないように、身辺整理をしておくというものです。死後の家族の負担や悩みはなるべく減らしておきたいですよね。この講座では、お金に関することを、財産情報、相続関係、自宅の処分に分けて説明します。
財産情報の整理の流れ
まず、財産目録を作成しましょう。預貯金は具体的にどの銀行にいくらあるのか、不動産(権利書)や車、有価証券等(どの証券会社か)、宝石や骨董類も含みます。遺言状を残す場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談したほうがよいでしょう。
また、預金通帳や土地の権利書、賃貸の場合は賃貸借契約書、生命保険証書等の重要な書類は、一か所にファイルでまとめて整理し、金庫などに保管します。セキュリティのために、通帳と印鑑類は別の場所に保存しましょう。
宝石類等の貴金属についても、同様に保管しておきましょう。その保管場所は、残された家族が困らないように伝えておくか、目録に記載します。貸金庫の場合も、代理人指定しておき、いざというときアクセスできるように手続きしておきましょう。
口座情報、暗証番号、ネット取引のIDやパスワードについても、可能な限り安全対策をし、家族がわかるようにまとめておきましょう。セキュリティソフト、ロックをかける、などは必須です。現金の引き出しや取引に関わる情報は、代理人を決め、今までご紹介した契約を利用することも考えましょう。そして、忘れてはならないのが自動引き落としされている商品やサービスの一覧です。定期配送のサプリ・会員費などの定期的な引き落とし、付随するクレジットカードの情報などは、解約方法や連絡先を明記しておきましょう。

相続対策
「相続」とは、被相続人(故人)の残した財産を相続人である方(配偶者や子供、兄弟姉妹など)へ引き継ぐことを意味します。引き継がれる財産を「相続財産」と言います。
相続遺産には、土地や家屋などの不動産、現金、預貯金、株券、自動車、骨董品などの動産のほか、国債、社債、生命保険金などの債権や権利金、特許権や著作権などの知的財産権があります。遺産相続では、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産(ローンや借入金)も相続しなければいけません。もし、マイナス財産を相続したくない場合には、裁判所にて「相続放棄」の手続が必要となります。その際には、プラスの財産も含めての放棄となり、手続きできる期間が定められています。
一般的に、服や愛用品、アクセサリーなどは、相続財産ではなく形見分けの対象となることがほとんどです。しかし、何百万円もの価値を有することが明確であるものについては相続財産の対象となります。明確な基準は設けられていないのですが、相続人同士で「不公平だ」とトラブルに発展する可能性の有無で判断します。うちはトラブルなどない、と思っていても、どんな金額であろうと「不公平感」を感じると不満が出やすいものです。必ず生前に決めておきましょう。
また、民法の規定により、生前に、相続財産に価するものを特定の人物に相続する意思表示をしても、エンディングノートや口約束では、その通りに分配することはできません。明確な意思がある場合には、エンディングノートではなく遺言書によって遺産分割の指定をしておく必要があります。
最近は、相続税負担が増えつつあります。生前贈与や、自宅の処分・譲与方法によって節税するこができます。まず保有財産を洗い出し、できれば家族と話し合って処分を決めることをお勧めします。相続について話をするのは、縁起が悪く、財産目当てのようで、と避ける方もいますが、家族の幸せのためには、元気なうちに話し合うほうがよいでしょう。