Lesson9-1 遺言書とは:形式・法的効力

a41441a8a7c2d18a7c1e8f9a484a1229_sこれまで、生前の財産管理や指示がないと、いかに遺族が苦労するかを見てきました。必要性をご理解いただいたところで、いよいよその遺言書について触れたいと思います。

遺言書は、遺言者が死亡すると遺言の効力を発揮するものです。 遺言書を残すのは相続のもめ事をなくす、円満な相続人の生活を確保するためなどに行われる被相続人の意思です。そして自筆で作成するものと公証人役場で作ってもらうものがありますが、特に自筆で作成する場合には注意が必要です。内容のちょっとしたミスで遺言が無効になることがあるためです。

「うちには相続するような財産はない」とおっしゃる方もいますが、マイナスの財産も相続対象になります。そして、公正証書遺言がない、法的に有効な明確な指示がない、財産目録がない、という場合は、遺族が多大な時間と労力をかけて探し出し、証明しなければなりません。マイナスの財産放棄や限定承認は、死後3か月以内というリミットがあり、看取りや葬儀で疲れている遺族にとっては厳しいものがあります。やはり、終活で整理し、明示しておくべき事柄でしょう。

遺言書の有無確認手続き

遺言書の種類は、主に3つあります。「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3つです。その種類によって遺言書の有無確認の方法は異なります。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです。公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されていますので、最寄りの公証役場で遺言検索システムを利用すれば、すぐに遺言書があるかどうかは分かります。ただし検索利用できるのは、相続人とその代理人のみです。

自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合

自筆証書遺言とは、全文を自分で書く遺言のことです。一方、秘密証書遺言とは、内容を秘密にしたまま、存在のみを公証役場で公証人に証明してもらう遺言のことです。遺族には手間になるのですが、存在が知られていなかったり、存在すると知らされていても保管場所まで特定できないことがあります。そのため、貸金庫や自宅や病院、入所していた施設の大切なものを保管していそうな場所などを探さなければなりません。膨大な手間がかかるため、終活でしっかり公正証書遺言を残しておいた方がよいでしょう。

【注意】公正証書遺言以外の遺言は、検認が必要。

公正証書遺言以外の遺言書を発見した場合は、家庭裁判所で検認手続きが必要です。さもないとその遺言書は有効になりません。検認とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに遺言書の形状や状態、日付、署名など遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きのことです。この検認を終えて、はじめて遺言書の内容に沿った相続手続きができるようになります。

家庭裁判所で遺言を開封、確認することを検認手続きといいます。ただし、中身のチェックをするわけではありません。つまり、遺言の内容が有効か無効かの判断はしないということになります。では何を検認するのか?目的は民法の定める方式で作成された遺言かどうかという事です。つまり、形式のみが遺言として有効かどうかを確認するのです。そして遺言として有効であれば執行するという流れになります。